中国への
販路開拓について
今、なぜ中国なのか
コロナ禍で訪日できない中国人観光客の興味は?
コロナ禍前の2019年。
過去最高を記録した訪日外国人観光客3188万人の中で最も多いのが中国からの観光客(約30%にあたる959万人)でした。
2位の韓国(558万人)、3位の台湾(489万人)を大きく引き離しています。
旅行消費額においても、全消費額の36.8%にあたる1兆7704億円が訪日中国人観光客によるもので、チャイナマネーは日本経済に大きく寄与していたといえます。
コロナ禍で海外旅行が難しい昨今でも、中国人の日本への興味は衰えておらず、日本産品に対する買物意欲は高まるばかりです(2020年4月「霓虹醤」のWechatアカウント調査:「コロナ後に日本に旅行に行きたい」と答えた人95.46%)。
一方、偽物や紛い物が横行している中国では真贋の見極めが大切で、日本からの輸入品であることが重視されています。
同じ日本企業製品でも、中国の工場で生産された製品より日本の工場で生産された製品の方が人気で、高くても売れています。
ロックダウンによって再評価された日本産品。
2022年の北京オリンピック閉幕後、中国各地でオミクロン株が感染拡大し、市民は自宅隔離、公共交通機関はストップ、スーパーマーケットをはじめ多くの商業施設も休業となりました。
大規模なPCR検査と隔離、地域の封鎖、水際対策を柱としたゼロコロナ政策です。
隔離が始まった当初は、政府配給物資に対する不満や欲しい物が手に入らないジレンマがあり、とにかく食料品が欲しい気持ちが優先していましたが、政府配給食品に偽物ブランドが採用されていたり、食品の包装にコロナウイルスが付着している可能性があるという情報によって、安心・安全な日本の食料品を求める声が大きくなりました。
上海など大都市では共働き家庭が多く、従来はデリバリーや外食機会が多かったのですが、隔離により自宅で調理する機会が増えたことから、日本料理やアジア料理にトライする機会も増え、日本食材のニーズも増えています。
並行輸入・非正規輸入の減少と正規輸入の増大。
そもそも中国は、関税が高い上、食品安全基準等の貿易条件のハードルが非常に高く、正規輸入が難しい状況でした。
高関税率の商品や中国に進出していないブランドは、海外からの運び屋による並行輸入、香港→深センの非正規ルート、ソーシャルバイヤーによる販売(EMSなどで商品を送付)などで中国に商品供給し販売されていました。
ところが、コロナによる航空便の減少や運賃の高騰に加え、中国入国時の隔離のハードルにより、運び屋による並行輸入や非正規ルートが壊滅し、正規ルート以外の商品供給が大幅に減少しています。
中国への商品供給は、所定の手続きを踏んだ一般貿易や保税区活用による正規輸入が必須です。
個人購入から共同購入へ、購買行動が変化。
中国では、ロックダウンによる物流麻痺により各家庭への配達が不可能になったことから、居住区のマンション単位での共同購買が発達しました。
「団長」と呼ばれる共同購入のリーダーは、住民の買い物を取りまとめ、物資の供給を保障する重要な役割を果たしています。
ロックダウン当初は野菜、肉などの生活必需品がメインでしたが、その後は、ジョエル・ロブションのパンセット、シェイクシャックのハンバーガー、海鮮セットなど高級食材や特定の銘柄や嗜好品などのニーズもが増え、市民のニーズに十分対応できる仕組みが構築されました。
政府の力が圧倒的に強い中国では、昔から「上有政策、下有対策」という有名な言葉があります。
国に政策があれば、国の下にいる国民にはその政策に対応する策があるという意味です。
今回も中国国民はSNSやECを使った新たな販売・購入チャンネルを築き上げ、不便な隔離生活でも生活必需品から嗜好品までのあらゆる物資を手にすることができたのです。
ロックダウンがもたらしたEC販売チャンネル。
ロックダウン下の苦肉の策で構築された共同購入ですが、ロックダウン解除後も市民はコロナ感染を恐れ、店舗でのオフライン購入ではなく、非接触型のオンライン購入が当面続くと予想されています。
ロックダウンは購買と物流の混乱を引き起こしましたが、ECによる新たな販売チャンネルをもたらしたともいえます。
新型コロナウイルス感染拡大当初から強力な封じ込め策をとってきた中国は、世界でもいち早く経済が回復。
これまで海外旅行に費やされていたチャイナマネーは、中国の国内旅行や消費行動に動いています。
つまり、中国人が訪日できない今こそ、良質な日本産品を中国に販売展開する好機です。
上海はじめ中国各地で実施されたロックダウンによる行動制限は、経済の低迷をもたらしましたが、現在はロックダウン解除とともに中国国民の消費行動は再び活発になっています。
ただ、中国政府はゼロコロナ対策の堅持を支持しており、訪日旅行の自由化、インバウンド復活は当面先であると予想されています。
この点からも日本産品の中国販売展開のチャンスは非常に大きいと言えます。
中国における巨大EC市場とその成功要因
中国は、日本では想像できないほどインターネットが普及しています。
店舗での買物、交通機関の利用、あらゆる場面でスマホ決済が当たり前になっており、財布を持たずに外出する人が多くなっています。
EC市場においても、2021年の独身の日(11月11日)に関連するEC販売額は、最大手「天猫」が9兆3094億円、2番手「京東」が6兆150億円と、過去最高を更新。
日本のEC最大手「楽天」の2021年販売額が1兆34億円であることからも中国の巨大なEC市場がうかがえます。
中国人が物品を購入するときのルーティンとして、その商品が本物かどうか、どんな特徴があるかなどを必ずインターネットで検索して真贋確認を行うこと、その際は企業の公式ホームページよりも掲載審査の厳しいSNSを信用することが挙げられています。
EC市場での成功要因は「認知度向上」で、知名度のない新規商品をいきなり大成功に導くことは困難ですが、展開商品にふさわしいSNSやECサイトで情報発信を重ねることで販路開拓は可能になります。
また、KOL(Key Opinion Leader)やKOC(Key Opinion Consumer)と呼ばれるインフルエンサーを効果的に活用し、「認知度向上」に繋げていく戦術も重要になります。
現地コーディネーター
現地コーディネーター深水エリナ
(株)ERINATRADING JAPAN 代表取締役
惠莉奈(上海)易有限公司 董事長総経理
アパマンショップホールディングスの経営企画・広報を経て、2008年に上海へ。
株式会社インフォブリッジマーケティング&プロモーションにて、中国のマーケティングリサーチおよびセールスマネジャーとして従事。
2013年、アイザックグループに参画し、日系企業のマーケティングリサーチ、データ分析、システム開発サービスなどを展開。
2017年、訪日インバウンドおよび中国でのSNSプロモーション事業を展開する上海勒訊企業管理諮詢有限公司(SMART)に参画。
2019年、SMARTの在日本の窓口として(株)スマートビジネスコンサルティング(SBC)を設立。
2021年12月、惠莉奈(上海)貿易有限公司を設立し、食器ブランドNoritakeの中国地区総代理店としてテーブルウエア商品の販売を行うとともに、中国でマーケティングリサーチ、プロモーション、ECやオフラインでの商品の販売、販売ルート開拓など幅広く手掛けている。
2022年、SBCを(株)エリナトレーディングに改称し、日本酒、焼酎、泡盛や加工食品はじめ、江戸切子、薩摩切子、包丁などのテーブルウエア、キッチンウエアを中心に中国に新規販売展開させる事業を行っている。
現地コーディネーター浮田真吾
(株)ERINATRADING JAPAN 九州OFFICE
所長 (利酒師、焼酎利酒師)
日本通運(1984-91)、北九州市(1991-2010)、上海東和旅行社(2010-)での経験を通じて国際物流、地方行政、インバウンド、中国経済・中国マーケットに詳しく、現在は(株)ERINATRADING JAPAN 日本側開発担当として中国展開希望企業開拓を行っている。
<主な実績>
日通時代に、輸入生鮮貨物、アジア太平洋博覧会(1989年)国際パビリオン、佐賀熱気球大会国際輸送担当。北九州市職員時に、国際見本市主催(6本)、物流政策・企業誘致、初代上海事務所長として、路線誘致、クルーズ誘致、インバウンドプロモーション、国際部課長として習近平中国国家副主席の北九州市視察(2009年)の総合ロジなどを担当。上海東和旅行社総経理として、社員旅行、インセンティブツアー、高校生修学旅行、小中学生サッカーキャンプなど特色のある訪日旅行を多数実施。2020年、コロナ禍のため帰国後、リモートで旅行業を行うとともに、(株)ERINATRADING JAPANと共同で北九州市の中国向けSNS情報発信業務を実施。2021年よりERINATRADING JAPANの九州Office所長。日本酒、焼酎、泡盛の酒蔵や酒造組合、江戸切子、薩摩切子、関の包丁はじめテーブルウエア関連企業商品の中国向販売展開企業を多数開拓。
中国で好まれる日本食
和食
中国国内の日本食レストランや訪日旅行を通じて、日本食ファンになる中国人は多数います。
一般的に中国人が好む日本食といえば、
- 刺身
- 寿司
- 天ぷら
- 焼肉
- すき焼き
- しゃぶしゃぶ
- 和牛(ステーキ)
- うなぎ
などであり、訪日旅行の際には本場の和食を一度は食べたいと言われる方が多数です。
B級グルメ
- ラーメン
- うどん
- お好み焼
- たこ焼き
など、いわゆるB級グルメも人気です。
日式料理
北京や上海などの大都市では、日本人オーナー・日本人料理人による日本食レストランもありますが、大都市あるいは地方都市の多くは中国人オーナー・中国人料理人による「日式料理店」が大多数であり、コロナ禍においてはその傾向はさらに強くなっています。
「日式料理店」で提供される料理は、中国人の思考で中国人向けにアレンジされた味付けやメニューも多く、日本人から見るととても日本料理とは言えないものもあります。
これは日本において日本人好みに変化した中華料理、イタリア料理、フランス料理などにも言えることです。
「日式料理」であっても、使われる食材は日本のものが求められており、ロックダウンを通じて盛んになった「おうち料理」における「日式料理」あるいは「日本料理」にも日本の食材が求められています。
特にロックダウン後は、友人や知人、団体購入を通じて親密になったご近所さんを招いたホームパーティが増えることも予想されており、日本から直輸入された食材や商品はさらにもてはやされることが考えられます。
訪日旅行時に味わった料理を家庭で再現しふるまうスタイルが今後も増えてくるでしょう。
中国における販路拡大実績
2018年~現在
日系大手高級食器ブランド、販路開拓支援から総代理店化し現地に根付いた販路開拓
2018年より、中国現地販社のECおよび販路拡大のコンサルティングおよびオペーレーションを開始。
2年で事業の黒字化を達成したものの、継続的に事業拡大できる人材が中国におらず、2020年1月に中国の総代理店として事業を開始。
年間売上は5億円以上。
ミシュランレストラン、高級会所(中国版料亭)、百貨店、食品卸会社等、取引店舗は高級路線を中心に500店舗以上にのぼる。
2021年~現在
中国販売展開サポート業務
中国販売展開を希望している日本全国の酒蔵(日本酒、焼酎など)や関の包丁、江戸切子などの販路開拓を行っている。